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今日もビールがうまい

よくブログタイトルを変えたくなるブログ

1102 THE NOVEMBERS 10th Anniversary TOUR – Honeymoon - @新木場STUDIO COAST

https://instagram.com/p/9lVAEjl4Dr/

待ちに待ったhoneymoonがはじまりました。7月に発表されてから、長かったようで短かったような。最後にTHE NOVEMBERSを観たのは8月末。2ヶ月恋しかったなあ……。

開演前は雨のように軽やかに鍵盤をたたくやわらかなピアノのメロディー。とてもシンプルで静謐な気配がただよう場内。普段行っているコースト(おもにDIR EN GREY)とはちがって、こんなにもコーストは白いのかあ……と思いました。お客さんは黒いひとが多いのですが。サティのジムノペディとともに開演。

『Elegance』を聴いてからというものの、私のなかで思い描いていたhoneymoonツアーは、「クララ」で幕をあけて視界がぱっと明るくなり彩られるさまでした。それが見事に演出されていて、「ここは私の夢なのか?」と思うほどに夢見心地な気分。ひんやりとした空気が身体をすこしずつ包み込んでいきながら、恍惚として聴き入っていきました。丸い模様がくるくると回るスクリーン、メンバーの影が大きくなったり小さくなったり……。身体ごとこの空間や音に吸い込まれていくような感覚がして、自分のありとあらゆるものが攪拌されて自分ではないなにかに生まれ変わるような気分でした。「そうか、美しいとはこういうものなのか」と思った。いままでに見たことのない、感じたことのないものを目の前にして、衝動のあまりここに身体があることすら気づかない感覚。次元をも超えてしまう。時間も空間も名前も、なにもなくていい。クララで味わった恍惚を、このツアーのどこかでまた味わえたら、それはとても最高。

「バースデイ」「chernobyl」「marble」といった彼らの初期の楽曲を聴くのは、これで2度目。(「バースデイ」は昨年のツアーで何度か聴いているのですが)ささくれだち、大きなものに抵抗しているような荒々しさがなく、つるんとマイルドな肌触りに変わったと思いました。私が高校生の頃に聴いていたときの、THE NOVEMBERSのイメージって「とげとげしさ」「毒々しさ」だったのです。とくに「バースデイ」の歌詞である「笑いながら路地裏では銃口を頬張る」、この部分が救われないような、水のなかに潜ってすこしずつ息を吸うような苦しさがあって好きでした。いまのTHE NOVEMBERSでは、そのような苦しさや不安定さを感じることはなく、すこし背伸びをしながら一方で余裕を感じることができるので観ていてとても面白いです。

「心一つ持ちきれないまま」という曲。本当に私のなかで、「ずるい!」って思ってしまうほどにずるい曲なのです。ライブで聴いたらさらにずるさが膨らんでしまいました。この曲はとくに、今回のEPのインタビューでも何度か言われていた「引き算」を巧みに用いているなあと思っていて。よいエッセンスだけを抽出して寄せ集められていてできている曲。『Rhapsody in beauty』とは対極にある存在の曲だと感じました。のびのびとしたサウンドがコーストという横長のハコにしっかりと響く。心地よかったなあ。

「裸のミンク」。EPを聴いて最後まで「?」の連続で馴染みにくい曲だったのですが、この曲は空間があるところでとっても映える曲。円を描くライトを目で追いかけてしまうほどに、バレエを踊っているような感覚。ベーシストのつくる楽曲はスルメが多い気がする(ライブで映える)。

「dnim」「鉄の夢」は今まで聴いてきたなかでも抑え気味の演奏に聴こえたのですが、前の曲までの流れを考えると、突っ走って終わりに持っていくような焦燥感を与えずにバランスがとれていたのかもしれないです。「236745981」のリズミカルな刻み、視界がぱっと明るくなっていくさまは何度観てもたまらない。私のなかでこの曲は、『Rhapsody in beauty』と『Elegance』の中間にあるような楽曲です。デザイン化されて洗練されているメロディーラインなのですが、一度それを解体して再度構築していくなかでそれぞれの要素をあえて過剰におどらせているような感覚。

「エメラルド」はEPの楽曲なんだけど、昔のTHE NOVEMBERSらしさの片鱗をみることができる曲だと思いました。picnicあたりに入っていてもいまの曲とは気づかないと思う。

THE NOVEMBERSの初期の楽曲を聴いたのは一昨年のCeremonyなのですが(そのころから行き始めたので)、そのときと感触が違うなあ。2年間で表現する音の雰囲気ががらりと変わってあらゆる音を作ってきて表現の選択肢が広がっていき、そこから選び抜かれたチョイス、そして10年にわたる活動で培ってきた独特の色気、両者が衝突せずに上手い具合で混ざり合っていると思いました。さらに腰をずっしりとおろした余裕からみられるおおらかさも。10年やそこらじゃない、もっと長くやってきたようにも思えてしまう不思議な色気。

「出る傷を探す血」からの「dogma」の流れは、ぎこちなさを節々で感じてしまったのですが、すこしモタつきながらゆっくりと「Blood Music.1985」と「Xeno」に持っていくのは、飛行機が滑走路を走って離陸するあのドキドキに似たようなものを感じました。この流れはこれからのセトリで定番になるのかな。

「Xeno」が終わって音の残像が耳にのこりつつ、まばゆい光に包まれてミラーボールが回り出し「Misstopia」。ミラーボールが辺り一面を照らし出してまわりだしたので、なんだか回転木馬に乗っているような気分になりました。この「Xeno」から「Misstopia」の噛み合わない色のことなる2曲の不思議な流れが、とても楽しかったです。1秒前まで日本にいたのに、今ブラジルにいるような気分になりました。

「きれいな海へ」。背景にはMV。まるで映画のエンドロールのようでした。本編最初の「クララ」とこの曲はどちらも新鮮味を感じる楽曲なのですが、コーストではそれぞれの曲を差別化する物差しを自分なりに解釈できた気がしました。「クララ」はかたちのないものが生まれる瞬間。曲中の「きみ」はまだ胎内にいる子どものことのように思いました。一方で「きれいな海へ」で思い描けるものは、かたちのあるもの/見えるものが生まれて蠢くすがた。

コーストでのライブ全体を観て思ったのは、「なんてつるんとしたたまごのかたちのような音なんだ」ということ。「クララ」では概念的な、目に見えないものが描かれているのですが、ありとあらゆる曲を演奏していくうちに様々な要素が混沌とし始めて、最終的にひとつのかたちになっていくさま。「きれいな海へ」では、ようやく形になったたまごを手のなかにおさめ、ヒナが孵り体温が伝わってくるような感覚。人肌にちかく、なめらかで、過不足のない世界でした。アンコールはもうなくていいよ、これで十分お腹いっぱいなんだよ……と思うほどに、ありとあらゆるものを吸収できた気がします。

アンコールでは「今日も生きたね」。この曲を聴くと、不思議にもありとあらゆるものや人を許せて、不安や雑念が取り除かれて、「これでよかったんだ」と思えるのです。全身の憑き物から解き放たれて浄化されていくような気分。

そういえばTHE NOVEMBERSの楽曲は限りなくポップなのですが、どこか冷めているようなところがあるなあと思っていて。「冷めている」という意味の定義はなかなか難しいのですが、それを表現するだけの語彙が見当たらない……。このツアーで見つけることができたらいいな、と思います。

 SET LIST

  1. バースデイ
  2. chernobyl
  3. 心一つ持ちきれないまま
  4. 裸のミンク
  5. dnim
  6. 鉄の夢
  7. 236745981
  8. marble
  9. エメラルド
  10. 出る傷を探す血
  11. dogma
  12. Blood Music.1985
  13. Xeno
  14. Misstopia
  15. きれいな海へ

EN.今日も生きたね

 

 

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